市長は「案を出す人」、市議会は「決める人」です。お金の使い道(予算)を作れるのは市長だけですが、それを通すには議会の賛成がいります。警察や法律のように、そもそも市の担当ではないものもあります。
市長(1人)
- 予算を作って出す(市長だけの権限)
- 条例の案を出す
- 市役所の職員の人事を決める
- 決まった予算で仕事を進める
予算・条例の案を出す
賛成・反対・修正する
やり直しを求める(再議)
不信任を決める
市議会(62人)
- 予算と条例を決める(議決)
- 副市長を選ぶことに同意する
- 決算を認める
- 大きな契約を認める
市長も市議会議員も、別々の選挙で市民が選びます。市議会の次の選挙は2027年春です。
任期4年回数の制限はない
立候補できる人25歳以上住所の条件なし
投票できる人18歳以上市内に3か月以上
市の1年の予算1兆1,318億円2026年度 一般会計
職員の定数18,803人半分以上は学校の先生など
出典:地方自治法 第140条ほか、公職選挙法 第9・10条(e-Gov)、福岡市公報 第7233号、福岡市の人事行政、市選管
約束を3つに仕分ける
候補者の約束を聞いたら、「市長が当選すればできること」なのか、「議会の賛成がいること」なのか、「そもそも国や県が決めること」なのかを考えると、話の重さが分かります。
市長だけでできる
当選すれば、その日から動かせる
- 市役所の組織や部署の見直し
- 局長などの人事
- 窓口やオンライン手続きの運用
- 決まった予算の中で、何を先にやるか
- 次の予算に何を入れるかを決めること
議会の賛成がいる
市長が出し、議会が決める
- 新しい事業のお金(給食費の無償化など)
- 手数料や使用料の上げ下げ
- 市民に新しい決まりを課すこと
- 副市長を選ぶこと
- 市独自の税(宿泊税など。国の同意もいる)
国や県の担当
市長は頼むことしかできない
- 警察(福岡県警)
- 税の種類と税率の大枠、法律
- 県立高校、私立学校
- 国が管理する国道の一部
- 教科書を選ぶこと(市の中でも教育委員会)
福岡市は政令指定都市なので、ふつうの市なら県がやる仕事の一部(県道の管理、小中学校の先生の給料、児童相談所など)を市が担当しています。
やってみよう:この約束、市長だけでできる?
高島宗一郎さんは2010年に36歳で初当選し、4回の選挙に勝って16年つとめました。今回は立候補しません。4回の選挙で何を掲げ、何をして、何が残ったのかを、出典つきで並べます。良い・悪いはつけていません。
| 選挙 | 投票率 | 高島さんの得票 | 得票率 | 立候補者 |
| 2010年11月14日 | 43.67% | 209,532票 | 43.07% | 8人(現職を破って初当選) |
| 2014年11月16日 | 38.73% | 256,064票 | 56.83% | 6人 |
| 2018年11月18日 | 31.42% | 285,435票 | 75.14% | 2人(投票率は過去最低) |
| 2022年11月20日 | 34.31% | 329,606票 | 75.70% | 3人 |
出典:市選管「市長選挙 候補者得票数の推移」。2022年は有権者128万人のうち、約3人に1人が投票しました。
掲げたことと、その後
やった 掲げた形で実現
途中・一部 進んだが途中か一部
やめた・変わった 取りやめ、中身が変わった
数え方で割れる 達成したかは定義しだい
確かめられず 公式の数字が見つからない
印の本人の発表は高島さん側の数字で、こちらで独立に確かめていないもの。論調ありは、特定の立場から書いている媒体です。
「待機児童ゼロ」は数え方で変わる
2010年の一番大きな約束は待機児童の解消でした。国の決まりで数える「待機児童」は2014年にゼロになりました。一方で、申し込んでも入れていない子(未入所児童)は1,000人前後で推移しています。どちらの数字を見るかで「達成した」とも「していない」とも言えます。
各年4月1日時点。2016〜2018年は市の公式値が確認できなかったので空けています。2010年の数字は当時の国の定義で、定義は2017年に変わっています。出典:福岡市 保育の施策資料、2024年 入所状況。
数字でみる16年(2010年ごろ → 最新)
| 指標 | 2010年ごろ | 最新 | 読むときの注意 |
| 人口 | 146.4万人2010 国勢調査 | 166.3万人2025 国勢調査 | 16年で約20万人増えた。 |
| 65歳以上の割合 | 17.6% | 22.3%2025 | 若い市だが、高齢化は進んでいる。 |
| 生まれた子の数 | 14,483人 | 11,467人2024 | 人口は増えたが、出生数は約2割減った。 |
| 保育所などの定員 | 24,349人 | 約42,000人2024 | 16年で約1.7倍。 |
| 市税の収入 | 2,654億円2010年度 | 3,837億円2024年度 決算 | 2017年度に先生の給料の財源が県から移った分が含まれるので、増えた分の全部が景気によるものではない。 |
| 市の借金(市債残高 全会計) | 2兆3,633億円2010年度末 | 1兆7,684億円2024年度末 | 減り始めたのは2004年度のピークからで、就任前から続いている。 |
| 観光客(入込客数) | 1,642万人 | 2,441万人2024 | 2020年に数え方が変わったので、厳密には比べられない。 |
| 市長選の投票率 | 43.67% | 34.31%2022 | 2018年は31.42%で過去最低。 |
出典:福岡市「参考データ集」2026年9月、R7国勢調査 確報、財政のあらまし H23版、財政のあらまし R6版
本人が挙げた数字を確かめる
2026年8月24日の会見で、高島さんは「次の市長選挙には立候補をいたしません」と述べました。理由として、首長には予算や人事の権限が集まるので、同じ人が長く続けることには慎重であるべきだ、と説明しています。そのとき挙げた16年の成果を、市の資料と照らしました。
| 本人の発表 | 市の資料で確かめた値 | 照合 |
| 人口 20万人増 | 146.4万人 → 166.3万人(国勢調査、+19.9万人) | 合う |
| 税収 1.6倍 | 2,654億円(2010年度)→ 4,172.6億円(2025年度 決算見込み)で約1.57倍 | 合う財源の移し替え分を含む |
| 市政への信頼度 41% → 84%超 | 2023年度の市政アンケートで「信頼できる」計84.9%。41%の元の調査は見つからず | 半分だけ |
| 1人あたり市債残高 ピーク時の半分以下 | 市民1人あたり(臨時財政対策債を除く)154万円(2010年度)→ 87万円(2024年度) | おおむね合うピークは就任前の2004年度 |
出典:2026年8月24日 市長定例会見、TNC 2026年8月24日、市政アンケート R5第5回
見方が割れているところ
同じ事実でも、立場によって読み方が違うものです。両方を並べます。